こどもに大事な感覚刺激
先日、金武小学校の先生向けに、
「学校生活につまずきを感じる児童との関りについて」
講話をさせていただきました。
その中で、
「子どもに大事な感覚刺激」についてお話ししたので、ここで紹介させていただきます。
感覚といえば、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の「五感」と呼ばれるものがありますが、それ以外にも、「触覚」、「固有覚」、「前庭覚」という大事な感覚があります。
これらは、身体をコントロールするためにとっても大事な感覚ですが、無意識的に働くため、なかなか感じ取ることはできません。
「触覚」には、識別する触覚と防衛的な触覚があります。
- 識別する触覚…「ポケットの中にはビスケットが~♪」というように、見なくてもポケットに何が入っているか、何枚入っているのかがわかる感覚になります。
- 防衛的な触覚…危険を感じたときに働き、熱いやかんに触れたときに瞬時に手を引く動きであったり、苦いものを口にしたときに瞬時に吐き出すことができる感覚です。
触覚は情動に影響します。例えば、天日干ししたお布団で眠くなる、あの心地よさは、触覚が快感情に働いた結果になります。
防衛的な感覚に過敏だと、服の素材に敏感であったり、歯磨きが苦手、偏食などが起こります。また、人とスキンシップをとることも不快に感じることもあります。
「固有覚」とは、筋肉や関節の中にある受容器が働き、力の入れ具合、自分の身体の位置や動きを感じる感覚です。
例えば、パックのジュースを飲む際に、力加減が上手くできず、ストローからジュースが飛び出すなんてことがあります。小さい子供は特にそうですね。それは、固有感覚の入力と調整が上手くいかないことで生じてしまいます。また、重力のある地球上で生活するには、筋肉の力加減を微調整しながら身体の位置や動きをコントロールする必要があります。
固有覚も情動や覚醒に大きく影響する感覚です。運動をしている時や立っている時に眠たくなることはありませんね。それは、固有覚が働き筋肉や関節に刺激が入り続けているため、眠くならないからです。つまり、固有覚が刺激されると覚醒する(目がさえる)ということです。
「前庭覚」とは…自分の身体の傾きやスピード、回転を感じる感覚です。傾斜のある坂道を歩いているとき、転倒しないよう身体を傾けていますね。また、平均台を歩いたり、ブランコに乗っているときも、眼球運動と連動しながら、状況に合わせて身体を変化させているので、転落せずに遊ぶことができます。
前庭覚も固有覚と同様に情動や覚醒に大きく影響します。絶叫系のアトラクションなどに乗ると、興奮しますね。興奮すると目も冴えますし、楽しい気持ちになりますね。それは、前庭覚が情動に快刺激として働き、覚醒を上げた結果になります。
「学校生活につまずきを感じる児童(子ども)」は、無意識な「触覚」、「固有覚」、「前庭覚」を、日々の生活の中で取り入れることが苦手であったり、反対に私たちが感じる以上に、取り入れてしまいます。その影響で、授業中などにボーっとしたり、眠くならないよう動きまわったりします。また、体位変化を怖がり、抱っこや遊具で遊ぶのを嫌がる子どももいます。授業中に、先生のお話を聞いていない、立ち歩いてしまう、体育の時間ににげてしまうなどが起こると、先生は大変困りますね。
金武小学校の講話では、作業療法士という立場から、そのような子どもたちの身体や脳のメカニズムをお話しし、子どもたちの悩みを共有させていただきました。また、子どもたちの気持ちを汲み取り、先生方が寄り添ってサポートできる方法など、具体的な意見交換をさせていただきました。先生方からも、「子どもたちも苦しんでいることを実感しました」や「児童がより良い学校生活が送れるようにしたい」、「教室での居心地を保障したい・安心して学習できることを保障したい」などの意見もあり、とても有意義な時間を過ごすことができました。
私たちは、幼少期の頃に、そのような感覚を遊びや生活を通して鍛えていきます。特に粗大運動と呼ばれる大きな動きを用いる運動は、「触覚」、「固有覚」、「前庭覚」を大いに刺激してくれます。
私たちの生活の中に粗大運動はどこにあるのでしょうか?
実はとても身近にあります。屋外での鬼ごっこやボール遊び、公園の遊具遊びも粗大運動を使ったものになります。屋外遊びは、体力をつける、筋力をつける、以外にも、無意識に入力される「触覚」、「固有覚」、「前庭覚」を鍛えることに有効な遊びの一つです。
梅雨も終わり、これから熱い季節になりますが、熱中症対策をした中で、子供たちをたくさん外で遊ばせるようにしましょう。