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物理療法について紹介します♫

専門的な内容について今回は紹介したいと思います。理学療法は、大きく運動療法と物理療法に分けられます。運動療法は理学療法の中のメインといえるでしょう。もう一つの物理療法は、運動療法の付属的に治療と思われていることが多いですが、理学療法士が用いることができる重要な治療手段の一つです。今回はこの物理療法についてお話したいと思います。

物理療法とは名前の通り、物理的な刺激を用いた治療です。熱、光、寒冷、水、牽引力などの刺激を用います。理学療法士としてこれを用いるためには、各刺激の物理的特性を理解する必要があり、これが学生にとって難しいようですが、物理療法の面白さはここにあると思います。

ここでひとつ、病院や施設などでよく用いられている温熱療法について少し紹介してみたいと思います。温熱療法は、熱エネルギーを用いた治療です。

熱エネルギーとは何か?熱エネルギーとは分子の振動で生まれる摩擦熱のことです。

実はすべての物質が、分子レベルで振動していることをご存じでしょうか?

温かさを感じない物質も実は分子レベルで振動しています。この分子の振動は摂氏-273℃(絶対零度)で完全に停止します。分子の振動が激しくなれば、温度はどんどん上がっていきます。逆に物質の温度を上げていくとその物質の分子の振動が活発になっているということになります。

温熱療法の中には、身体に直接熱を持つ物質をあて、身体の特に水分子の振動を高めて温める方法と、熱を持たない電磁波や音波などが体内の水分子を振動させることで熱エネルギーに変換させる方法(エネルギー変換熱)とがあります。例えば、ご家庭で使用される電子レンジは、マイクロウエーブ(極超短波)とい電磁波が使用されており、これを照射し、物質に含まれる水分を振動させることにより物質内で熱を発生させ温めています。エネルギー変換熱をさらに詳しく説明すると、水分子はプラスとマイナスの電子を帯びています。一方、物理療法で用いる電磁波は、プラスとマイナスを交互に行き来する電場をつくりながら、それに垂直にN極とS極を行き来する磁場をつくります。マイクロウエーブ(極超短波)であれば、プラスとマイナスの行き来を1秒間に30万回繰り返します。これを生体内に照射することにより、水分子が1秒間に30万回プラスとマイナスを入れ替えることになります。この入れ替えによっておこる摩擦が熱エネルギーとなり、身体に影響を与えます。

           

では熱は身体にどのような影響を与えるでしょうか?

まずに温熱により、組織の細胞の基礎代謝が高まります。温熱の効用の根本にはこの組織の細胞の基礎代謝の亢進があります。組織温が1℃上昇すると細胞の代謝機能は、約13%上昇します。細胞の基礎代謝が亢進すると、細胞が必要とする酸素、栄養量、産生される代謝産物が増加することになります。これにより身体は、細胞に多くの酸素、栄養を運び、代謝産物を排出しなければなりません。酸素、栄養、代謝産物は血液により運ばれますので、心臓から送り出す血流量が増加します。よって心臓の働き(心拍数)は増加し、血管は広がります。血管が広がると血圧は低下します。また必要とする酸素量が増えますので、肺での酸素と二酸化炭素の出し入れが活発となります。また血管は体温が上がると熱を放散するためにも拡張します。痛みを伴う組織などでは、発痛物質が貯留しているため、血管の拡張により、発痛物質を流し、痛みを抑える効果があります。次に温熱は筋などの軟部組織などにも影響を与えます。軟部組織の主成分であるコラーゲン線維の伸展性が高まるとされています。このため筋のストレッチを行う際などの前処置として、温熱療法が用いられます。さらに免疫機能に対しても影響を与えます。生体内において温熱はTリンパ球などの増殖により、免疫機能を亢進させます。

 これらの生理的作用により、温熱療法は痛みのある人、血行不全がある人、筋肉などの柔軟性の改善が必要な人などに用いられます。

 これに対して、温熱療法は悪性腫瘍や動脈硬化、血栓症、出血傾向のある疾患などには使用することはできません。温熱療法の場合、悪性腫瘍に対しては腫瘍の代謝も亢進してしまい、成長を助長してしまいます。また動脈硬化や血栓症、血管が拡張すると血栓が肺や脳にとび、肺塞栓症や脳塞栓症になる危険があります。また出血傾向のある人に対しては、血管が拡張し血流量が増加すると出血を助長してしまいます。このように各物理療法に使用してはいけない疾患や身体状況などがあり、これを物理療法の禁忌事項といいます。

 今回は温熱療法についてお話ししましたが、他の物理療法それぞれに物理的特性、生理的作用、適応疾患・身体状況、禁忌事項があります。適切に物理療法を用いるためには、これらに加え、各物理療法機器の使用方法をしっかり理解する必要があります。

琉球リハビリテーション学院の理学療法学科では、2年時の物理療法学の授業でこれらを学びます。物理的特性など難しいイメージがありますが、ここを理解すれば物理療法が面白くなってきます。学生にはこれをしっかり理解して、適切に根拠をもって物理療法を用いることができる理学療法士になってほしいと思います。

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