敬老の日に
作業療法学科の上江洲です.
私の祖母は昨年,103歳で永眠しました.
3年前に施設入所を検討していると私の母から相談があった時,
私が勤めていた介護老人福祉施設,いわゆる特養ホームを勧めました.
理由は介護老人福祉施設の利用者にとって作業療法が必要ですが,
作業療法士が勤めている施設は極端に少ないからです.
入所の空きが出たタイミングで祖母は申し込み,利用することができました.
作業療法士は立ち上がりや移乗動作が難しい高齢者の機能訓練を実施し,
目標となる動作が難しい原因を評価します.
また方法を工夫したり,安全に安心して効率的に動作できる道具を考えます.
目的は機能低下の軽減もありますが,それ以上に大事にしている視点があります.
作業療法の対象となる方が1人で難しい生活動作はあったとしても,
やりたいことができるように支援をすることです.
それはトイレに入りたいとか,歩くことも含みますが,
好きな花に水をやりたい,誰かのために手工芸作品を作りたい,
家族と一緒に外食したい,孫のために手料理を作ってあげたい,
という希望にも対応します.
人は生活動作が自立しているだけでは満足しません.
物忘れがあったとしても,1人で立つことが難しくても,
生きることはできますが,自分らしく生きるために必要不可欠ではありません.
トイレや食事,移乗動作,着替えは生活するために大事ですが,
それ以外の時間の方が多いのです.
やりたいことができない,やってみたいことを言えない,
できることがあるのにできる機会がない.
そんな状態が続けば,1ヶ月,1年,10年も続くと,
人は身体と気持ちが動かなくなってしまいまず.
高齢者施設において作業療法士はその人が大切にしていることが,できるように支援する専門家です.
そのためにどこで,誰と,どんな方法で,
大切にしていることやっているのか調べます.
どんなやり方,道具,環境であれば,できるようになるのか考えます.
それを他職種と共有して,チームで支援できるように意見交換できる場を作ります.
祖母は気の合う入居者らとコーヒーを飲みながらカラオケに参加し,
自宅で育てていた洋ランを施設へ運んでもらって水をやり,
最期まで安心して自分らしく生活を送ることができました.
敬老の日になると,行事よりも当たり前の暮らしを支えた日々を思い出します.
作業療法士になってよかったと思うのです.