2020.05.26 (火) コラム
理学療法士が怪我をしたら、どう対処をするのでしょうか?
膝前十字靱帯(ACL)損傷(断裂)の治療
<診察~手術~リハビリまで>
皆さんもいままで怪我をしたことがあると思います。もちろんリハビリテーションのプロフェッショナルと言われている理学療法士も怪我をします。
今回は、ある理学療法士がスポーツで怪我をしたらどうなってしまうのかをご紹介します。
40歳前後のPT男性教員が、日ごろの運動不足解消のためバスケットボールの大会に練習もそこそこな状態で参加した。案の定、試合開始早々ジャンプして着地したときに膝がガクッと外れて転倒した。ケガした瞬間に「ゴリッ」や「ポキッ」などの音を伴うことがあることを知っていたこの教員は、自分の状態やこの「ゴリッ」という体の中の音からすべてのことを察したという。その後、数分間は痛みのため動けなくなり、時間とともに膝が腫れてきて膝の曲げ伸ばしができにくくなったとのこと。
通常、この症状は2~4週間ほどでで改善し、日常生活などは普通にできるようになります。
しかし、スポーツ復帰したときに、再度膝がガクッと外れることがあるようです。
【膝前十字靱帯損傷の主な症状】
「膝がぐらぐらする」「膝に力が入らない」「膝が完全に伸びない、正座ができない」「スポーツ復帰して何度も膝を外してしまう」「膝が腫れて、熱をもつ」などの症状がみられます。
【診察】
ケガをしたときの状況を聞き、膝の診察(靱帯が切れているか、痛み、腫れ、熱感があるかなど)、MRIなどの所見、膝のゆるみの検査などから総合的に診断します。それらをもとに、現在の膝の状態を説明し、本人のニードを交えながら治療方針を話し合います。その後、膝の可動域や筋力を回復させるために術前リハビリテーション(理学療法)の処方が医者から出ます。
【術前リハビリテーション】
膝前十字靱帯損傷の後、時に膝の曲げ伸ばしの回復が遅れたり、ももの筋肉(大腿四頭筋)がやせて力が入りにくくなる場合があります。このような状態が続いていると、正常に歩けず日常生活に支障をきたしてしまいます。適切なリハビリテーションを行えば、通常2~4週ほどで日常生活はもちろん、ジョギングなどの軽い運動は出来るようになります。
手術前の状態が悪ければ、術後の回復も順調に進みません。
【手術(膝前十字靱帯再建術)】
ケガの後、適切なリハビリテーションを行えば、ケガをしてから3~4週で手術が可能となります。再建は大きく2種類あります。1つは半腱様筋(はんけんようきん)という、もも((大腿)の後ろの筋肉の腱を使用するものです。もう1つは骨付き膝蓋腱(しつがいけん)という、膝のお皿の下にある腱を使用するものです。どちらの手術を選択するかはスポーツ整形外科の診察時にお話があります。手術は内視鏡にて行われます。
【術後リハビリテーション】
手術後は膝の可動域や筋力などの回復具合によって多少前後することはありますが、およそ以下のようなスケジュールとなります。手術後翌日からリハビリテーション開始となります。リハビリテーションは基本的に強い痛みや不安感のない範囲で進められ、けっして無理のないように行われます。リハビリテーション室では膝の関節可動域エクササイズ、筋力エクササイズ、歩行練習を中心に行います。リハビリテーション開始当初から痛みや不安定感のない範囲で体重をかけていき、通常1週前後で杖や装具がなくても安定した歩行が可能になります。日常生活レベルの活動(通勤、通学、階段昇降など)は、およそ7~10日前後で可能となりますのでこの時期に退院となります。4週前後で自転車エルゴメーター、8週前後でジョギングが可能になります。競技の種類にもよりますが、筋力測定で合格すれば5ヶ月頃より非対人のスポーツ練習を開始し、6.5ヶ月頃より競技復帰という形になります。
【MRI画像】
下記の画像は前十字靭帯を損傷した当学院の教員本人のものです。矢印の部分で靭帯が損傷しているのがはっきりと見えますね。かわいそう。
<<受傷直後の膝前十字靭帯MRI画像>>
(ACL損傷画像 発症日:3月29日 撮影日:3月30日)
彼は受傷後、直接病院には行かずバスケットボールのメンバーと居酒屋へと消えていったそうです。その後学院の物療機器を使い理学療法士の知識を生かし自己治療に専念する日々を送っています。その後の彼の膝の状態はどうなったのか、続きはまたの機会に報告いたします。
いかがでしたか。理学療法士が怪我をしても、まず医者に診断をしてもらいます。医者からの処方がでて初めて理学療法士の治療が始まるのです。その後は、いつもの手順に沿って自ら治療を始めることができるのが理学療法士の知識を持つ資格者です。
是非皆さんも、理学療法士になって自分の体を治療してみませんか。もちろん怪我をしないことが第一ですけどね。