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2021.02.08 (月) コラム

リハビリテーションを紐解く

リハビリテーションを紐解く

よく耳にする「リハビリ」という言葉がある。一般的な理解としては、手足を動かし身体の調整を行うというような印象を受ける。馴染みのある言葉になってきているが、本来のリハビリテーションとはどのような意味があるのだろうか?

 

リハビリテーション(rehabilitation)の語源はラテン語に由来し、「再び(re-)適した状態にする(habilitate)という意味である。単に身体機能の回復だけを意味するのではなく

“人間らしく生きる権利の回復”、“全人権的復権”

である。

 

「全人間的復権とは人間らしく生きるための権利の回復である。障がい者が人間として自立し、社会参加し、再び人間らしく社会人として生活するのを援助する」ことがリハビリテーションのゴールと上田 敏先生(医師)は述べている。

また世界保健機構(WHO)は次のように定義している。

「能力低下の場合に機能的能力が可能な限り最高の水準に達するように個人を訓練あるいは再訓練するため、医学的、社会的、職業的手段を併せて、かつ調整して用いること」WHO 1968年)。

このような文脈は概念であるため一般の方へは理解に難色を示すが、要するに何らかの身体的・精神的なエラーによって活動に制限が起こった場合、様々な側面からアプローチを行い対象者の調整を行う意味が含まれる。

 

従来の医学は疾病(病気)が対象であったが、リハビリテーション医学は障害を対象とする。障がいとは医療上の問題だけでなく、日常生活活動を円滑に遂行するうえでの社会参加の制約も含まれることを言う。対象者が今後どのような人生を歩み、生活を行っていくのかを考慮しながら対応を行うことである。

 

日常生活動作(食事・整容・入浴・更衣動作など)の自立と生活の質の向上を目指し、社会的不利を克服するためのあらゆる援助を行い、患者や障害のあるヒトを人間としての生活の質、人生の質、生命の質を可能な限り高めることもリハビリテーションの中では非常に重要な要素である。

「生活の質」という部分が非常に大きく「そのヒトらしさ」を見出し提供していくことが必要である。

 

リハビリテーションの歴史としては、第2次世界大戦(1945年)前後で大きな変化があった。

1945年以前は「障がい者が身体的・心理的・職業的・経済的有用性を最大限に回復すること」とされたが、生活概念が明確に取り上げられるはなかった。1945年以降(米国)の動きは、第二次世界大戦後多くの戦傷者の機能障害回復の為の方法を発展させ、同時に生活機能の障害、特に基本的動作能力の障害に取り組まざるをえなかった。負傷者(切断など)に対してその機能を改善させることは困難である。もちろん疾病そのものへのアプローチは重要であるが、同時に対象者に対して生活へのアプローチも重要であると位置づけがなされたのである。

 つまり、リハビリテーションとは

疾病や損傷した部分のアプローチを提供しつつ、そのヒトの家庭環境を含めた日常生活や社会活動までも配慮し、様々な資源を用いて提供する事

である。対象者が住み慣れた地域で暮らし育み、今後の生活を送るための手段である。

 

医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、介護福祉士、薬剤師、栄養士など様々な専門職種が情報を共有し対象者を支えていく。それぞれの立場から支えることで一つのユニットとして機能しアプローチが可能となる。それらの職種は互いの職種を理解しシームレスな関係性を構築することができる(チーム医療)。

そのチーム医療こそが地域社会に求められている重要な役割である。

われわれ医療職はリハビリテーションという概念を下に、生活の質の向上を念頭に置き住みやすい生活作り環境作りなどを提供し、疾病予防や健康増進にも関わり地域への配信していくことが責務である。

理学療法学科

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