2021.08.31 (火) コラム
コロナ禍のステイホームに潜む腱鞘炎
みなさんこんにちは。作業療法学科です。
コロナ禍のこのご時世、おうち時間が増える中でスマホやパソコンを触る機会も多くなったのではないでしょうか??・・・・親指の付け根、痛くないですか?
もしかして「ドゥケルバン病」かも?
ドゥケルバン病は腱鞘炎の一種で、親指の使いすぎなどが原因で起こります。昔は美容師や音楽奏者など「職業病」と言われていたのですが、最近はそうでもないようです。
今回は、「腱鞘炎」について少し小話を・・・・
数ある腱鞘の中でも、手首の親指側には2本の「腱」が通っており、この2本の腱が通るトンネルが「腱鞘」になります。
親指や手首を繰り返し使いすぎることにより、この腱と腱鞘がこすれてしまい炎症を起し痛みや腫れが出ることがあります。これが、いわゆる「腱鞘炎」です。
親指に負荷をかけすぎることで、2本の腱の表面が傷つき、腫れます。
同時に、その2つの腱を覆う腱鞘も厚くなり、腱の通り道が狭くなってしまいます。
さらに、腱の滑りも悪くなるので、親指・手首を使うとより炎症が広がり、腫れや痛みといった不快症状が酷くなるという悪循環に陥ります。この症状が手首の親指側にでるのがこのドゥケルバン病になります。近年は、スマホを使う人たちにも増えているため、「スマホ腱鞘炎」とも呼ばれています。
上記の通り、使い過ぎが原因となることが多いのですが、どんな動作が誘因となるかと言うと、例えば片手でのスマホ操作やギターなどの楽器演奏、コントローラーを使うゲームなど、何気ない動作が繰り返し行われることで、負担がかかっていると考えられます。
また出産後の女性で首の座っていない赤ちゃんを抱くときの姿勢など、手首を曲げながら親指を使う動作が、特に手首の腱鞘にストレスがかかります。
私も1人目出産後、まだ首が座らない娘を、慣れない手つきで抱っこして経験しました・・・涙。
私の場合は、痛くて家事が行い難くなってきたので受診して注射してもらい、良くなりましたよ~!
また、妊娠出産時期や更年期など、ホルモンバランスの乱れも関係していると言われており、圧倒的に女性の方が高い罹患率となっています。
年齢別にみると、発症のピークは2回あると言われており、
ピークその1:妊娠・出産時期:20~30代
・授乳や沐浴で赤ちゃんの頭を支える時など、親指を広く開く動作を頻繁にすることで、親指に負担がかかる
・妊娠・出産によるホルモンの関与
ピークその2:更年期:50代~60代
・閉経に伴うホルモンバランスの変化
・家事による手の酷使
そのほか、糖尿病が基礎疾患にある方は、むくみやすく炎症しやすいので、ドゥケルバン病だけでなく他の腱鞘炎も起こりやすいので手の使い過ぎは注意ですね。
さぁ、思い当たるふしのある方。セルフチェックしてみましょう。
親指を中に入れて手を握り、そのまま手を小指のほうへ傾けます。この動作が痛みのために出来ない場合は、ドゥケルバン病の可能性があります!
これはアイヒホッフ(Eichhoff)テストといって、実際に使用される検査です。
痛みでこの動作が出来ない方は可能性がありますが、動作は出来るけど軽い痛みがある程度であれば可能性は低いですが、無理に動作を行わないようにしてくださいね!
気になる方は、専門の医療機関への受診をお勧めします。
さて、ひどくなる前にちゃんとメンテナンスしておきたいですよね。
専門の医療機関へ診察すると腱鞘内ステロイド注射などの治療もありますが、基本的におうちで出来るメンテナンスとしては、
・局所の安静
・アイシング
です。腫れや熱感がある場合はアイシングや湿布などの消炎鎮痛薬が効果的ですが、熱感がなく血液循環を促進させたい場合は温熱が良い場合もあります。
ただ、局所の安静とはいうものの、手は日常生活を行う上で使わざるを得ないですよね。
なので、長時間同じ姿勢での作業を避け、合間に手を休ませるための休憩を取る事が大事です。また、親指を曲げないように固定するサポーターや装具(スプリント)なども、お勧めです。
それでも改善せず症状がひどい場合は、腱鞘を切開して腱のトンネルの容積を広げるような手術が必要になることもあるかもしれません。
このように、家事やスマホ操作など、日常生活の中で親指や手首を使う動作は意外と多く、知らぬ間に負担をかけていることも少なくありません。コロナ禍の中、自宅にいる時間が長くなり、ゲームやスマホ操作だけでなく在宅ワークや家庭保育などで長時間同じ姿勢を取ったり、ストレスのかかる動作を反復して行ったりすることも多くなっているかと思います。これからは「親指や手首の負担」を意識しながらセルフケアを行って、ドケルバン病を予防しましょう!