2020.07.03 (金) コラム
女性が作業療法士という仕事を持つこと 「子育て」と「作業療法士」
今回のコラムは女性が作業療法士の職に就き、結婚、ママ(まだまだ、新米ですが…)と生活スタイルが変化する中で、私の仕事と家庭、育児との向き合い方、作業療法士をして感じるメリットを独断と偏見でご紹介したいと思います。
突然ですが、2014年の作業療法士協会の統計で、作業療法士の男女比率は、女性が全体の64%になり男性よりも女性数のほうが上回っています。
リハビリというと、一般的に力仕事を想像する人も多く、実際に患者さんの身体を支えたりするなど、筋力が求められるケースもありますが、作業療法士が得意とするのは、料理や洗濯などの家事動作や、裁縫や園芸といった趣味動作、折り紙やお手玉などの遊び動作など、女性が主に日頃行っている活動がリハビリとして提供されていることも、女性の割合が高くなっている一因となっていると思います。また、同じリハビリを専門とする理学療法士は、作業療法士とは反対に、男性のほうが女性より多くなっています。
私自身、18歳で某専門学校 作業療法学科へ入学した際、30名のクラスに男子は4人という状況でした。最近は、作業療法士の職種も認識し始め男子学生も増えつつありますが、私の学生時代は、男子は理学療法士、女子は作業療法士という漠然としたイメージもあったように感じます。
1.生活スタイルの変化と仕事
作業療法士は医療・福祉の分野で働く仕事です。そのため、勤務の形態は患者さんの特性により変化していきます。職場によっては、「365日のシフト制(土日、祝日の休み固定ではない)」を設けていたり「早番」や「遅番」などの体制が組まれていることもあります。一方、月~金の8:30~17:30までの固定勤務という職場もあります。つまり、働く場所によって大きく変化するということです。
実際、私自身、はじめは、「365日のシフト制」の病院で勤務しておりました。独身で若いこともあり、混まない・費用が安いなどメリットがあり、平日休みの買い物や友達とランチ、イベントへの参加、シーズンを外しての旅行などシフト制の勤務をフル活用していましたが、結婚を機に、家族に合わせた生活が必要となり、「365日のシフト制」の職場から比較的固定勤務がしやすい職場へと転職しました。
つまり、働く場所の特色として、自身の生活スタイルの変化に合わせて働き方を変えやすいということです。配偶者の職業がなんであれ、職場を移ることで、相手の勤務体系に合わせて働くということもできますし、配偶者の都合で転勤した場合でも、国家資格という特性から、全国すべての県ですぐに職場を探すこともできます。
また、他医療・介護職のように、急患に対応することがないため、休日に呼びだされることや急に忙しくなって残業に追われることもなく、日々の勤務時間は比較的安定しています。
このため、結婚後も作業療法士として働き続けるという人が大多数を占めており、作業療法士協会の統計によれば、結婚を機に退職する人は協会員全体の1%以下となっています。
2.子育てと作業療法士
女性は一般的に、結婚・出産・育児と生活スタイルの変化に伴い、退職や転職を機にキャリアをあきらめることが多いですが、私は結婚・出産・育児を作業療法士として働きながら経験しています。もともと、外へ出て活動したい性格もあり、結婚や出産をしても「仕事はしたいなぁ」と漠然ではありますが、考えていました。ただ、実際に結婚・出産・育児を経験すると、仕事と家庭を両立することに不安があったあり、技術を積むこと(スキルアップ)ができないのではないかと感じることもありました。
しかし、職場によって多少異なりますが、作業療法士は女性のほうが多い職業であるということもあり、子育てしながら働くための支援体制が充実していたり、出産休暇や育児休暇制度に加えて、子どもがいる作業療法士に対しては時短勤務を認めているケースも多く、職場に託児所も設けているところもあります。
私自身も、子どもを出産してからは時短勤務をし、仕事と育児のバランスをとっています。
育児がライフワークの中心となり、研修会などに参加することもできなくなり、もうスキルアップは望めないと感じていたなか、あるきっかけで作業療法士として「子どもの支援」に関わる機会がありました。「子どもの支援」に関わるうちに感じたことは、今の実生活である育児がとても「子どもの支援」に役に立つことです。
自分の子供の成長を通して、障がいを抱える子供たちと関わると、「なぜ、困っているのか?」をスムーズに理解できるようになっていきました。理解が深まると支援の方法は明確となり、支援の幅も広がっていきます。現在、私は学校教員の傍ら、「子どもの支援」にも携わるようになり、また、新たな領域で自己研鑽しております。
このように、私は、時短勤務で仕事をしながら育児をこなし、育児の経験をもとにスキルアップを目指し日々奮闘しております。良いご縁があり、新たな領域へ進んだ私ですが、作業療法士の仕事は、小児領域、身体障害領域、精神障害領域、老年期領域、行政、教育と幅広い領域で活躍でき、自身の経験を通して仕事へ繋げていくことが可能な職業になります。
もともと合理的な私は、無駄のないスマートな生活に満足しています。これも、18歳の進路選択の際に「よくわからないけど作業療法士いいかも」で入ったこの世界ですが、結果的に、女性として取得する資格では非常にメリットが多いように感じます。
私自身の経験をもとに独断と偏見でご紹介させていただきましたが、作業療法士もいい職業だなと興味をいただいていただければ嬉しいです。
略歴
高校卒業後 沖縄県内の作業療法養成校で資格取得
取得後 関東 身体障害領域の病院で勤務
沖縄に帰省 老健施設やデイサービスで勤務
その後、琉球リハビリテーション学院で教員として勤務