2020.08.18 (火) コラム
日本とアメリカの理学療法
こんにちは!!
琉球リハビリテーション学院那覇校学院長の宮城です。
初めに、今年4月に新設した那覇校理学療法学科の紹介をしたいと思います。
那覇校は理学療法に特化した専門学校です。安里駅から徒歩約3分の立地条件の良い晴らしい場所にあります。周りには幾つか高校があり、那覇校入学を希望する高校生が多数います。大変嬉しい限りです。新築の校舎に最新の機器を備えています。教員は琉リハ金武校で十分に経験を積んでおり、学生支援に自信を持っています。
那覇校の特徴として、アメリカで理学療法士として働いた経験がある教員がおり、その他にも、海外での生活を経験している教員が数名いることが挙げられます。
私はアメリカの大学を卒業し、その後理学療法士として4年間群立病院で働きました。8年間アメリカに滞在しておりました。今回のコラムでは、アメリカでの理学療法士としての経験を踏まえ、日本とアメリカの理学療法の違いについて若干述べさせていただきます。
1. 理学療法免許
日本では国家試験を受けます。合格して免許を取得すると、その免許で日本中何処ででも理学療法士として仕事をすることが出来ます。それに対して、アメリカはState Board(州試験)です。州をまたいで仕事をしようとすれば、再度その州で免許を取得する必要があります。他の州の免許使用を許可している州もありますが、基本的には認められません。
2. 教育課程
日本の理学療法教育は、3年あるいは4年の専門学校、短大そして大学での教育課程です。理学療法士になるためには、最短3年間で免許を取得することが出来ます。それに比べて、私がアメリカでPT教育を受けていた頃は4年間大学で学び、BSDegree(学士号)を取得State Boardを受けることが出来ました。しかしその後はMaster(修士)に移行し2020年現在、全てのPT養成校は大学院で博士レベルのDPT(Doctor of Physical Therapy)を取得することになっています。アメリカで理学療法士になるためには最短7年間かかります。時間はかかりますが、理学療法士はドクターであり、社会的に認められた職業です。毎年高校生のなりたい職業の上位にランク付けられています。
3. 教育内容
私の学んだ大学(ロマリンダ大学)の場合、最初に受ける授業は解剖学でした。4学期制でしたが最初の学期から解剖学で遺体解剖が始まります。遺体を見るのに慣れていない私にとって、かなり緊張感のある授業だったのを覚えています。1ヵ月過ぎる頃にはすっかりその授業に慣れ、御遺体に感謝しながら学ばさせていただきました。まず座学で、3ヵ月間午前中2時間ほど人体の骨、筋肉、神経、脳、内臓等の名称を覚え、その後解剖室に行き、学んだことを確認するため遺体解剖を自ら行いました。成績は、全ての科目でScale Scoreのような相対評価が用いられ、2科目までは再試が認められますが、3科目が再試になると留年という厳しいものでした。日本の場合、絶対評価です。クラスメイト同士助け合い、国家試験合格を目指して一致協力し合える事は学生達にとって素晴らしいことだと思います。
4. 仕事内容
日本の理学療法はまず医師からの処方箋が必要です。その後は理学療法士が評価をし、理学療法計画を立案し自ら治療を実施します。アメリカにおいては、理学療法士は理学療法評価や計画を立てる事に専念し、実際治療を行うのは2年間大学で教育を受けた理学療法アシスタントが行います。理学療法士とアシスタントの役割の棲み分けが出来ています。2015年には、アメリカ全50州で理学療法士が医師を介さずに独自に診断や治療ができる“Direct Access”という権利が認められました。また、アメリカでは理学療法士がクリニックを持つことができます。理学療法士には開業権があり、診断や治療ができます。州によっては、dry needling(細い鍼を用いて疼痛と運動障害のマネジメントを行う方法)や画像検査のオーダーを行うこともできます。
5. 職場
日本の多くの理学療法士は病院や施設で働いています。これから徐々に職域が増えてくるでしょう。アメリカにおいては1990年頃までは大部分の理学療法士は病院内で働いていましたが、その後はアメリカにおいて医療は地域医療に方向転換し、地域で働く理学療法士が増えてきました。開業権取得により開業する理学療法士が増えてきました。多くの理学療法士はそのようなクリニックで働き、地域医療を支える訪問リハビリテーション等に携わる理学療法士が増えてきました。
日本とアメリカの理学療法の違いは多々ありますが、日本における理学療法もアメリカにおける理学療法もやりがいのある素晴らしい仕事に違いありません。両国の違いにはまだまだ記すべきところがありますが、今回は紙面の都合上この辺でコラムを終わりたいと思います。
略歴
中学校英語教諭3年
1984年カルフォルニア州ロマリンダ大学理学療法学科卒業
サンバーナーディノ群立病院(現在Arrowhead Regional Medical Center)理学療法士4年
アドベンチストメディカルセンターリハビリテーション科課長26年
某理学療法養成校非常勤講師20年
介護認定審査員20年
琉球リハビリテーション学院金武校理学療法学科教諭5年
2020年4月より琉球リハビリテーション学院那覇校学院長