2021.06.09 (水) コラム
脳卒中リハビリテーション
今回は、理学療法士や作業療法士の活躍する臨床現場で関わることの多い脳血管疾患のリハビリテーションについてお話します。
脳卒中とは?
脳卒中とは、脳血管疾患とも呼ばれがんや心疾患と合わせて三大疾病と呼ばれています。
脳の血管に何らかの問題が生じ出血や虚血(血管が詰まって血が行き届かなくなる状態)が起こることを言います。
それぞれ出血性のものを脳出血、虚血性のものを脳梗塞と呼ばれます。
細かく分類すると色々な名称がありますが、今回はリハビリテーションについて主に記載していきますので省略させてもらいます。
脳卒中を発症しやすくなる因子としては様々ですが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、過食、運動不足、過剰な塩分摂取、多量飲酒、喫煙習慣などが関与していると言われています。
脳の機能
脳は右脳と左脳に別れており、大きく分けて前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉に分かれています。脳は場所によって役割が異なっていて前頭葉は運動、頭頂葉は感覚、側頭葉は聴覚や言語、後頭葉は視覚に関与しています。
もちろん、その他にも多くの働きをしていますが、それぞれの部位が情報をやり取りしながら正常な運動や行為、普段の生活が行えています。
症状・後遺症
脳卒中を発症すると多くの場合で後遺症が残ることがあります。
脳の損傷部位によって様々な症状が出現します。
運動は他者からも見ることが出来るので理解が得られやすいですが、高次脳機能障害(失語や失行、注意障害など)は一般の方から見ると理解されにくい症状と言われています。
代表的な症状として運動麻痺や感覚麻痺があります。
右脳は左半身、左脳は右半身に関与していますので、損傷した脳部位と反対側の手や足に症状が出てきます。
リハビリテーション
前置きが長くなりましたが、脳卒中のリハビリテーションについてです。
多様な症状があるので、それぞれをしっかりと評価した上で治療を行っていきます。今回は、運動麻痺をメインにお話をしていきます。
運動麻痺を対象とした治療法は多くの理論がありますが、「これをすれば良くなる!」といった統一された治療法は残念ながらありません・・・
以前は、発症後6ヶ月くらいが運動麻痺を改善する期間とされていましたが、近年の脳科学や治療法の発展によって考え方も変化してきています。
脳の神経が再組織化されることや別の神経細胞が修復することがわかってきています。
また、慢性期(発症から長期間経過)のリハビリテーションについても効果があると認められている治療法もあります。
現在、麻痺している身体で無理をしすぎない範囲で動かしていくことが良いだろうと言われています。
運動麻痺が起こると正常な運動と異なる運動パターンによる代償運動が出やすくなってきます。
代償運動が出過ぎない程度の難しさで運動を行っていくことが重要になってきます。
この難易度の調整が難しいのですが、そこを行うのが私達専門職の腕の見せどころ!!
単純運動での練習も大切ですが、目的をもった運動の反復を行うことで効果が得られます。
ただ動かせば良い。というものでもないんです。
何のために手を動かすのか?運動に意図を含めて行っていく必要があります。
運動と感覚は表裏一体という考え方があります。
こういった考え方のもとで行っていく治療法では自分の身体(麻痺した半身)に注意を向けて、感覚を認識していく訓練方法もあります。
感覚に意識を向けて、運動を感じる事から始め徐々に運動を行っていきます。
麻痺していない身体の動きを手本として、麻痺した身体で動かしてみる。
それぞれの感覚を認識して何が違うのか?どんな感じがするのか?などを考えていきます。
この「考える」というのが実は大切になってきます。実際に運動を行っているときの脳活動と運動を考えているときの脳活動は同じ部位の脳活動が起こっていることが明らかになっています。
近年のリハビリテーションでは、機械を用いたリハビリやヴァーチャル・リアリティ(VR)を用いたリハビリも行われるようになってきています。
機械を用いたリハビリテーションでは、実際に動かすことが難しい方でも機械でサポートして運動したり、筋肉に電気刺激を入れて運動を促していくことが出来ます。
私達の身体は、脳からの電気信号を受けて筋肉が収縮して動いています。
この電気信号を検知して足りない所を機械がサポートすることで動かすことが出来るようになります。前述したように、自分の意志・意図を持って動かす事で効果が得られると思います。
「運動麻痺に対するリハビリテーションは敗北の歴史」
ということを聞いたことがあります。
「元通りになりたい。」
当たり前かもしれませんが、このように希望される方がほとんどです。ですが、実際には元通りというわけには行きません。
私達専門職も色々なことを考えながらリハビリを行っていますが、後遺症がゼロになることは難しいことです。
VRなどの新しい機械が開発され、治療の方法も変化してきています。
いつの日か勝利を迎えられる日が来れば・・・と願っています。