2021.04.30 (金) コラム
【沖縄の伝統行事と作業療法】
こんにちは!
4月になって新年度が始まり、皆さんも慌ただしい日々をお過ごしかと思います。琉球リハビリテーション学院でも新入生を新たに迎え、バタバタしながらもみんな新生活へ意欲的に取り組んでおります。
4月といえば、沖縄では伝統的な行事「清明祭(しーみーさい)」が行われ、週末になると至るところでお墓参りをする風景を見かけます。
昨年と今年は新型コロナウイルス感染予防の影響で、例年に比べ集まる人も少なくなっているようですが、ウチナーンチュ、特にご高齢の方々には非常に大きなイベントとなっていると思います。
「清明祭」とは、旧暦の24節季の「清明」の時期に行なわれるお墓参りのことをいいます。
県内でも地域によって違いがあるようですが、4月の第一日曜日に「神清明(カミウシーミー)」が行われ、翌週に「門中清明(ムンチューシーミー)」があり、それから近い故人のお墓参りになるそうです。
古い昔から伝統的に伝わり、それを大切にしてきた私たちの先祖の偉大さをとても大きく感じます。
私の地元は他と少し違っており、お墓の前で家族が揃って食事をしたりすることはなく、実家の仏壇にお供えをした後、ビンシーという線香やお酒、お米などが入った木箱を持ってお墓に行き、色々な方角に向かってウートートー(手を合わせて拝む)をします。
他の地域のシーミーに比べると大きなものではありませんが、「いつやるのか」、「ちゃんとやったのか」、「やりかたは間違えていないか」など、口うるさいオバー達の質問攻めにあいます(笑)。
時にはお茶の入れ方や供え物の数や順番、作法などを事細かに説明されますが、言ってくるオバーで教えることが違うので困ることもあります(もしかしたら、シーミーあるあるかも)。
「ウンネーアランドー(こうではないよ)」、「ウングゥトゥルサントーナランドー(こういうふうにしないとだめだよ)」が、シーミーの時のオバー達の口癖です(笑)。
子どもの頃は同世代のいとこ達と遊ぶことが楽しく、集まる意味もよくわかっていませんでしたが、作業療法士になって対象者の方々と向き合っている中で、「シーミー」の意味や価値をわかるようになってきた気がします。
「あんたのところはもうシーミーやったねぇ?」、「今週はシーミーがあるから外泊しようね」などの言葉を聞いているうちに、いかに大事なものなのかを感じられるようになりました。
沖縄の人々はシーミーを行なうことにやりがいを持ち、自分自身の役割や存在意義を見出しているのではないかと思います。
また、年齢を重ねるごとにシーミーの大切さを感じ、それを行うことが仕事をすることと同じくらい重要な位置づけになっているのかもしれません。
「やらないと罰があたる」という感覚ではなく、やることで満足感を得て癒されているのかも…。
作業療法士になったからこそ、オジーやオバー達があれやこれやと教えてくる意味を知れたのかな(笑)。
私たち作業療法士は「生活支援」をすべく、対象者の方々へ関わっています。
よって、私たちは沖縄の方々が大切にしている「シーミー」をその人らしくできるよう支援することも、とても重要な役割になると思います。
単にお墓参りをすることだけではなく、お供えものの調理をしたり、供花を選んだり、若い世代に段取りを教えたりなど、その方にとってやりがいとなっているものが何なのかを知ることがなによりも大切です。
やりたいことができるよう支えるためには、私たち作業療法士も「シーミー」のことを含め、その地域の伝統行事のことも知らなければならないかも、ですね。
そして、その中でも対象者の方が何にやりがいを感じ、どのようなことを望んでいるのかを理解し、実現できるよう支援していかなければなりませんね。
「ワン(私)ガウランネー(いないと)、ヤーグナーターヤ(家の人たちは)、ヌーナラングゥトゥヨー(何もできないからさあ)」、「ワンガ(私が)シーユー(やり方を)ナラーサントナランッサー(教えないといけないさあ)」、「チューヤ(今日は)ヤーンカイケーティ(家に帰って)、ティームウサギラントナラングゥトゥヨー(手を合わせないといかないからさあ)」、などと話すということは、自分の生活に充実感があり、自身の役割があり、それに取り組もうとする意欲のある証であると思います。その言葉を、いつまでも言っていただけるような支援ができる作業療法士になりたいですね。
また、琉リハで学ぶ学生には、このようなことこそ大切に思える支援者になってほしいと願います。
世の中には、私たちの知らないことがたくさんたくさんありますよね。
全部のことを知ることは難しいかもしれませんが、出会う方々から教えてもらえることもたくさんあるかと思います。
私たち作業療法士も、対象者の方から学ぶことがたくさんあります。「人との出会いが最高の学び」かもしれません。